【結論】
9月21日の夕方、家の壁で出会ったハラビロカマキリのメスが、
その夜、ケースの中で静かに産卵を始めました。
卵鞘(らんしょう)が形成される様子、
色や形の変化、産卵後の行動まで——
わずか数時間のあいだに見せた、美しい命の営みを記録しています。
【出会い】曇り空の午後、壁の陰からこちらを見ていた一匹
9月21日の午後。
家の壁に目を向けると、こちらを覗き込むようにして
一匹のハラビロカマキリがいました。
その日は珍しく涼しく、秋の気配が近づいてきた頃。
例年、初秋の曇り空やイワシ雲が出るころに、
よくカマキリと出会うのを思い出します。
観察のため、そのまま優しくケースへ。
【産卵開始】夜11時、白い泡をまといながら卵鞘を作り始める

夜の11時頃、ケースをそっと覗くと、メスが産卵を始めていました。
- お尻をうねうねと動かす
- 白い泡状の分泌物を周囲に出す
- 卵を包み込むように外側を形成していく
その姿はとても力強く、しかし静かな時間でした。
【卵鞘(らんしょう)とは?】
ハラビロカマキリが産む卵鞘は、
- 白い泡状の分泌物が固まったもの
- 中には数十〜100個ほどの卵
- 冬の寒さと乾燥から卵を守る保護カプセル
翌年春、20℃前後になると子カマキリが一斉に孵化します。
【静かに寄り添う“豚さん貯金箱”】

観察していると、たまたまそばに置いていた
“豚の貯金箱”が、まるで見守るように佇んでいました。
暗い部屋の中で、不思議と温かい雰囲気でした。
【卵鞘が整う】泡が固まり、輪郭がくっきりしてくる

しばらくすると、卵鞘がだんだんと形を整え、
カマキリらしい丸みを帯び始めました。
泡が固まりながら層をつくり、
卵をしっかり包み込む構造になっていきます。
【有精卵?無精卵?】見分けは孵化まで分からない
カマキリは交尾していなくても産卵します。
ただし、その場合は 無精卵 で孵化しません。
交尾後の産卵なら 有精卵 となり、
春に子カマキリが誕生する可能性があります。
今回の個体がどちらかは、孵化を見るまで分かりません。
それもまた観察の楽しみです。
カマキリの卵の見分け方をカマキリの卵嚢は有精卵と無精卵で何が違う?形と色でわかる見分け方で紹介しています。
【白金色に輝く完成卵鞘】3時間かけて丁寧に形成

出来上がった卵鞘は光の加減で白金色に輝き、
とても美しい仕上がりでした。
産卵開始から、完成まではおよそ3時間。
その後、メスは卵が固まるまでの数時間、じっと動かず寄り添っていました。
【翌朝】卵鞘のそばで静かに見守る母カマキリ

翌朝10時頃の様子。
メスは卵鞘のすぐそばにいて、
まるで卵を守っているようでした。
【卵鞘の管理方法】飼育下で春を待つには
観察用に卵鞘を管理する場合は、
- 乾燥しすぎないよう霧吹きで軽く湿らせる
- ただし過湿はNG(カビの原因)
- 風通しの良い場所で冬越しさせる
自然に近い環境が一番です。
【産卵翌日の卵鞘】茶色く硬化し始める

翌日には、卵鞘がしっかり硬くなり、
表面の筋もくっきりしていました。
その日の夜には、ハネナガイナゴを元気に捕食。
産卵後とは思えないほど力強い回復ぶりでした。
【さいごに】命の繋がりを感じた夜
このハラビロカマキリと出会ったとき、
曇り空の下からこちらを見上げるような表情でした。
涼しい初秋の空気の中で、
産卵場所を探していたのだと思います。
自然界では、数多くの卵が産み落とされても、
成虫まで育つのはほんのわずか。
来年の春、
この卵鞘から小さな命が誕生するかもしれないと思うと、
胸がじんわり温かくなります。
これからも静かに見守っていこうと思います。