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「種付け料1200万円の時代――ブライアンズタイムを30年前の種牡馬カタログで振り返る」

本棚の奥にずっと眠っていた一冊の古い本を、
ふとしたきっかけで開いてみました。

それは、私が若いころ…
阪神競馬場や中京競馬場へ数回足を運んでいた時代、
まだ新聞を片手に馬柱を追っていた頃に買った種牡馬カタログでした。

ページをめくると、
一頭の黒鹿毛のスタリオンが堂々と立っていました。

――ブライアンズタイム。
種付け料 1200万円 と大きく印刷されたその数字に、
思わず「こんなに高かったのか」と胸の奥が熱くなりました。

おそらくこの数字は、受胎時の条件などで変わってくると思います。
実際の取引は受胎条件や時期、牝馬の質によって柔軟に変動していたように思います。
人気種牡馬ほど枠の争奪戦が激しく、ブライアンズタイムも例外ではありませんでした。

30年という時間は、同じ競馬でもまるで別世界です。

サンデーサイレンス系が当たり前になった今の感覚とは違い、
当時はブライアンズタイム、トニービン、リアルシャダイなど
“外国血統の大物” が日本競馬を押し上げていた時代でした。


■ 種付け料1200万円――数字が語る“期待”と“重み”

今の視点で見ても、1200万円という数字は破格です。
当時の馬産地の空気を考えれば、さらに重い数字でした。

バブル崩壊直後で市場が冷えていたにもかかわらず、
ブライアンズタイムはトップクラスの種牡馬として
堂々とこの価格でページを飾っています。

「この馬なら大物が出る」
「血統に夢がある」
そういう期待が、数字そのものに詰まっていたのでしょう。


■ 血統表に刻まれた“個性” ― ロベルトの気性とリボーの底力

カタログの評価欄には、
距離適性・気性・安定性・底力など、
今では見かけなくなった素朴で分かりやすい記号が並んでいます。

その中には、こんな記述がありました。

「ここ一番に弱い面もあるが、母系にリボーの血が入り底力がある」

これを読んだ時、私は思わずうなずいてしまいました。

ロベルト系らしい“気性の強さ”と
リボーの“粘りと底力”。
ブライアンズタイムの産駒は、
良い意味で“極端”な個性を持つ馬が本当に多かったのです。

走るときは手がつけられないほど強く、
走らないときはまるで別馬のように凡走する――
そんな“出来不出来の差”こそが、
この血のロマンでもありました。


■ ナリタブライアンという怪物の影に、父の面影がある

三冠馬 ナリタブライアン の強さを思い出すと、
その怪物性の根っこに父ブライアンズタイムの血があることを
あらためて感じます。

深く沈むような加速、
ギアが一段も二段も違う脚、
そして長距離でもバテない強靭さ。

「気性」と「底力」が混ざり合った血。
古いカタログの評価欄は、
その本質を見事に言い当てています。


■ ダートにも強い万能型――ロベルトの米国血統

カタログには
「ダート◎」
としっかり記されていました。

今考えても、これは本当に正確です。

ブライアンズタイム産駒は
芝もダートも走る万能型で、
アメリカ血統らしい力強さとタフさが際立っていました。

“中距離〜長距離の底力”と
“ダートの粘り”を両立できる血は珍しく、
だからこそ多くの繁殖牝馬がこの馬を求めたのでしょう。


■ 1990年代の競馬界の空気がよみがえる

古いカタログの紙の匂い、
写真の色合い、
評価の書き方、
そして少し古い印刷のインク。

それらすべてが、
今では味わえない“競馬の時代の空気”を連れてきます。

当時はまだサンデーサイレンスが本格的に芽を出す前で、
「どの血を日本に根付かせるか」という議論が盛んでした。

トニービンが来て、
リアルシャダイが根付き、
そしてブライアンズタイムがその中心にいた――
そんな時代の真ん中を、この本は静かに記録しています。


■ 古い本は、時代を映す鏡

30年前のカタログを読みながら、
私は何度もページを戻し、
当時の空気を吸い込むように眺めていました。

「この馬たちが、日本競馬を作ってきたんだな」

そう思うと、数字の横にある
小さな評価記号ひとつにもあたたかさを感じます。

古い本は、ただの資料ではなく――
時代を映す鏡 なのだと、
じんわり心が熱くなりました。

これからも、
本棚に眠る昔の本をひもときながら、
競馬の歴史と、自分の思い出を重ねていきたいと思います。

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