バロックの巨匠ペーテル・パウル・ルーベンス(Peter Paul Rubens)。
その筆は、光と影、肉体と精神、
悲しみと救いをひとつの物語に融合させました。
ここでは、ベルギー・アントワープの
聖母大聖堂(Cathedral of Our Lady)に飾られる
3つの傑作祭壇画――
《十字架昇架》《十字架降架》《聖母被昇天》を通して、
ルーベンスが描いた「信仰の三部作」をたどります。
✝️第1章:十字架昇架 ― 苦悩の力、信仰の力
原題:The Elevation of the Cross(1610–1611)
ルーベンスの初期代表作にして、
バロック絵画の幕開けを告げた作品。
キリストを十字架に掲げる男たちの肉体は、
神の意志を担う人間の力
そのものを象徴しています。

提供元:istock カメラマン:Lumir Pecold
赤・黒・金のコントラスト、
斜めの構図――
あらゆる線が「天と地を結ぶ緊張感」に
満ちています。
信仰は苦悩の中にこそ宿る――
そう語りかけるような作品です。
🔗 個別記事はこちら → 十字架昇架 ― 光と苦悩の狭間で
🕊️第2章:十字架降架 ― 静けさの中の慈悲
原題:The Descent from the Cross(1612–1614)
十字架から降ろされるキリストの姿を、
ルーベンスは静謐な光の中に描きました。
白い布が放つ清らかな輝き、
マリアの涙、弟子たちの手の重なり。

提供元:istock カメラマン:Lumir Pecold
そこには悲しみと同時に、
人間の優しさと救いへの祈りがあります。
「死」は終わりではなく、
愛へと続く道――
この作品は、
観る者に“沈黙の信仰”を思い出させます。
🔗 個別記事はこちら → 十字架降架 ― 沈黙の光が語る哀しみと救い
👑第3章:聖母被昇天 ― 天へ昇る永遠の慈愛
原題:The Assumption of the Virgin Mary(1626)
アントワープ大聖堂の
主祭壇を飾る壮大な一作。
マリアが無数の天使に囲まれ、
天へと昇る姿はまさに光の交響曲。

提供元:shutterstock カメラマン:Isogood_patrick
下では使徒たちがその奇跡を見上げ、
地上と天界の間に永遠の調和が描かれます。
ルーベンス晩年の成熟した筆致が、
神の愛の深さを讃えています。
🔗 個別記事はこちら → 聖母被昇天 ― 天に昇る光と母の慈愛
🌈三部作に流れる共通テーマ
| テーマ | 内容 |
|---|---|
| 光と闇の対比 | 神の啓示と人間の弱さの象徴。すべての作品に共通する核心モチーフ。 |
| 肉体と精神の融合 | ルーベンスは信仰を「動き」「筋肉」「呼吸」で描いた。 |
| 信仰の循環 | 昇架=苦悩、降架=慈悲、被昇天=救済。三部作は信仰の旅路そのもの。 |
🕍まとめ
アントワープ大聖堂に立てば、
三枚の祭壇画が語りかけてきます。
苦悩の力(十字架昇架)
沈黙の慈悲(十字架降架)
そして永遠の光(聖母被昇天)。
それは、400年の時を超えて今なお輝く
「人間と神の物語」です。