こんにちは
オオカマキリのメスだけの飼育、寂しいところに
家の玄関の網戸、夜に出会った1匹のオオカマキリのオス
との出会い。

「寄生虫を追い出し、それでもなお交尾に挑んだ一匹のオス。
その執念と本能を、2度にわたって目撃しました。」
ハリガネムシを排出した後の回復
飼育中のオオカマキリのメスが2匹いました。
1匹は、産卵したばかりのおそらく無精卵、もう1匹は、お腹の大きいメスでした。
それぞれに、オスを近づけ交尾アタック。無理でした
その上、ケースを見たらハリガネムシがいてオスのケースでした。絶望しました。
このオスは、元気がよく威嚇攻撃もするし身体つきもしっかりしてました。
しかし、1パーセントの希望を抱いて次の日の夕方に交尾アタックをさせてみましたら
なんと、生殖器をうねうねさせていましたので
オスの子孫繁栄への意欲を、沸き起こそうと軽く接触させ
その日の夜に、本格的な2度目の交尾アタックをこころみました。

今回、交尾アタックの相手のオオカマキリのメスです。
捕獲時に、真ん中の向かって左足が半分ちぎれて残りが黒く
変色して壊死していましたが、元気にエサを食べたり
力もありました。
最初の交尾──長時間の静寂と緊張
お腹の大きいメスの背中に強引に乗せて、カマで掴ませました。
すると、しっかりと掴み生殖器を接続させようと頑張っていました。

これは、交尾アタック成功したシーンです。
後ろの影のシルエットと感動しました。

しっかりと生殖器が、接続されています。
2時間ほどの、交尾時間でした。
カマキリの繁殖の仕組みや、交尾後に何が起こるのかは
「カマキリの産卵と繁殖のメカニズム」 を読むとさらに理解が深まります。
2度目の交尾へ、休息1時間半の後

交尾を終えて、逃げるのかと思いきや
なんと、メスが動こうとするとカマと身体を振動させて
メスをジッとさせて、1時間半ほど離れませんでした。

なんと、2度目の交尾アタック開始。
後ろの影シルエットが、よけいに幻想的で素晴らしい
時間と空間でした。
交尾時間は、6時間超でした。
おそらく、3時間ほどで精子の受け渡しは終えていると思います。

なぜ、すぐに離れないのだろう?
カマキリのオスは、交尾後すぐに離れると
他のオスに精子を上書きされる可能性があります。
そのため、精子の競合(sperm competition)を防いでいると
思われます。
これをメイトガーディング行動と呼び、
カマキリでは特に「オオカマキリ」で多く観察されます。
目的は──
- 他のオスの接近を防ぐ
- メスの体内で自分の精子が確実に受精に使われるようにする
という“生存戦略上の延長戦”なのです。
離脱の瞬間──斜め下に舞う命のジャンプ

なぜ、オスはメスから逃げるのだろう。
1. メスに捕食されるリスクがあるため
カマキリは「性的共食い(sexual cannibalism)」で知られています。
特に栄養状態が悪いメスは、交尾後にオスを食べることがあります。
✔ メスにとって
→ オスを食べることで、産卵に必要な栄養を補える
→ より多くの卵を産める可能性が高くなる
✔ オスにとって
→ 食べられたら次のメスと交尾できない
→ 自身の生存が脅かされる
そのため、
オス = 「交尾は成功させたいが、食べられたくはない」
という強い本能があり、交尾後に一気に距離を取って逃げます。

生殖器を外し、ゆっくりとカマをほどいて
足をジャンプへの体制にしています。

逃げ切れる確率は、どれくらいだろうか?
種によって違いますが、おおまかに次のような傾向があります。
- オオカマキリ(Tenodera aridifolia)
→ 10〜28% 前後 - ハラビロカマキリ
→ 約10〜20% - チョウセンカマキリ
→ 20〜30%
つまり裏を返せば…
👉 約70〜90% のオスは“食べられずに生き残る”
ということになります。
(※もちろん飼育環境やメスの空腹具合で大きく変動します)

オスは、一度飛ぶ方向を安全か一瞬だけ見ました。
そして、メスの方をみてメスが振り返ったその時に。

100匹オスがいたら、何匹逃げきれるかな?
共食い率を 20%(平均的な値) として計算すると…
100匹中の生存数
- 捕食されるオス:20匹
- 逃げ切るオス:80匹
共食い率を低めにすると…
共食い率10%の場合
→ 90匹が逃げ切る
高めにすると…
共食い率30%の場合
→ 70匹が逃げ切る

翅を羽ばたかせて、足をジャンプさせて
素早く離れました。

飼育下だと、共食いは増える可能性があるよ。
- メスが空腹
- ケージが狭く逃げ場がない
- オスの逃走が遅い
などで共食い率は上がります。
野外では、オスは俊敏に飛んで逃げるため、
**研究者も「野外のほうが生存率は高い」**と考えています。

少しだけ、メスのカマが開いていました。
オスの逃げていく、忍者のように離れる瞬間、
逃亡すると言っていい程の姿が
命がけの交尾アタックを
物語っていて
笑えました。
まとめ
命を燃やし尽くすように交尾を終え、
朝の光の中に消えていったオス。
それは“本能”という言葉だけでは片づけられない、
命の物語でした。