家の裏で、一本の竹が天を突くように伸びていました。
囲い木の中から現れたその竹は、他の草木よりも太く、
まっすぐに空を目指していました。
その姿を見つめていると、ふと想像してしまいました。
――この竹に蛇が絡みつき、
やがて龍となって天へ昇っていく光景を。

🟢囲い木の中から現れた一本の竹
家の裏にある囲い木――普段は目立たないその中から、
ある日、一本の竹が顔を出していました。
私は、切るのをやめてどこまで伸びるだろうと思い
そのまま放置していました。
他の草木を押しのけるように、まっすぐ空へ向かって伸びていく姿は、
まるで天へと導かれているようです。
最初は細かった幹も、成長するにつれて驚くほど太くなり、
気づけば3〜4メートルの高さに。
これ以上は伸びませんでしたが、
その一本には確かな“生命の勢い”が宿っていました。
🟢 竹に宿る“生命の力”
竹は地中に長い地下茎を伸ばし、
目に見えないところで新しい命を準備しています。
そして、ある日突然、地上に顔を出して一気に伸び上がる――。
その成長はまさに“生命の爆発”です。

わずか数か月のうちに成長を終えるため、
すべての力を一点に注ぎ込むように天を目指します。
この一本の竹もまた、限られた空間の中で、
己の存在を示すかのように立ち上がっていました。
🐉 蛇が龍へと昇る ― 想像の中の自然信仰
竹の幹を見上げていると、
思わず心の中に“蛇”の姿が浮かびました。
蛇が竹に絡みつきながら昇っていき、
やがて天へと龍となって飛び立つ――。
日本では古くから、蛇は再生や豊穣、
そして龍への変化を象徴する存在として語られてきました。

竹もまた、真っすぐ天へ伸びる「生命の柱」
として神聖視されてきた植物です。
それらが重なった瞬間、
家の裏の静かな一角に“自然の神話”が生まれたように感じました。
🌤 切った後にも残る「生命の記憶」
① 先端の葉の出方(枝が「2本ずつ」発生)
写真を見ると、枝の出方が
左右に細い枝が出て、その先に葉がつく
という典型的なマダケの姿です。
② 稈(幹)が細く、まっすぐ非常に長い
マダケはモウソウチクに比べて
細くてしなやか で、
1本だけ高く伸びることが多いです。
写真の竹も、まさに
「ひょろっと高く伸びるマダケの幼竹」
そのものです。
③ 稈の表面が薄い黄緑色で、粉(蝋粉)がほとんどない
マダケは若い時期ほど
・薄い黄緑〜明るい緑
・表面に粉が少なくツルッと見える
という特徴があります。
④ 葉が細長く、やや小ぶり
マダケの葉は細くて長め。
写真でもその特徴がよく出ています。
📌 マダケ(真竹)
学名:Phyllostachys bambusoides
日本の里山に最も多い種類で、
・しなやか
・節間が長い
・細くまっすぐ伸びる
・枝が2本ずつ出る
という特徴があります。
やがて、この竹は切らざるを得ませんでした。
家の囲いの中で、
これ以上成長できない場所だったからです。
けれど、切ったあとも、
その竹の印象は心の中に強く残っています。
まっすぐに伸びようとした力、空を見上げる姿勢、
それは“生きること”そのもののように思えました。
今では、その竹を乾かして眺めながら、
自然が見せてくれた奇跡の瞬間を思い返しています。
🌿 おわりに ― 竹龍という象徴
一本の竹が、ただの植物ではなく
「生命の象徴」として心に残りました。
その姿は、自然が語りかけてくれる静かな
メッセージのようでした。
竹龍(たけりゅう)――
それは、地に根ざしながらも天を目指す、
私たち人間の生き方にも通じるものかもしれません。
今日もまた、風が吹くたびに、
あの竹が揺れていた時の音を思い出します。