こんにちは。
夏には見かけなかったヒメナガメが、
秋の終わりにセイヨウフウチョウソウ(クレオメ)の葉へ集まり始めました。

この写真が、セイヨウフウチョウソウ(クレオメ)です。
枯れかけた植物の汁を吸う姿、種の部分で育つ幼虫、
そしてマクロレンズで見える細やかな模様。
それぞれの行動に、虫たちなりの生き残り戦略があるようです。
秋のクレオメに集まったヒメナガメたち

枯れかけたクレオメの葉や茎に、
黄色と黒の模様が目立つヒメナガメの姿がありました。
夏には見かけなかった虫たちが、
秋の終わりに一斉に集まっていたのです。
クレオメはアブラナ科に近い香り成分を持つ植物。
彼らはその匂いに誘われ、
まるで“間違い訪問”のように群がっていたのかもしれません
それでも、この行動は越冬前の重要な栄養補給。
自然の中で生きる知恵を感じます。
ヒメナガメとはどんな虫?

これは、成虫です。
体長約7mmほどの小さなカメムシで、
黒地に黄色や橙色の模様が入る美しい種。
アブラナ科植物の汁を吸うことで知られていますが、
近縁のクレオメにも反応するようです。

お腹側の、模様です。
お腹までオシャレですね。
🧬 ① 主食はアブラナ科植物
ヒメナガメの基本生態から見た珍しさ
ヒメナガメ(Eurydema rugosa)は、
古くから「ナズナ虫」などとも呼ばれるほど、
アブラナ科植物(ナズナ、ダイコン、ハクサイ、カラシナなど)に特化した吸汁性カメムシです。
つまり通常、マメ科や他科の植物にはほとんど寄りつかないのが一般的。
そのため、
アブラナ科以外の植物(クレオメなど)に群がるのはかなり珍しい現象です。
クレオメを選んだ理由とは?
アブラナ科に似た香り成分
クレオメはアブラナ科と化学的に近く、
イソチオシアネート系の香りを放ちます。
ヒメナガメの嗅覚を刺激して集まったと考えられます。
追肥の影響と栄養価の変化
約1か月前に与えた少量の化成肥料が、
植物内の糖やアミノ酸を増やし、汁液をより甘く栄養豊富にした可能性があります。
匂いと味の両面で虫を引き寄せたのかもしれません。
幼虫から成虫まで、世代で利用するクレオメ

これは、幼虫です。
種の部分には幼虫の姿も見られ、
さやの部分から、汁を吸って育っていました。
つまりこのクレオメは、ヒメナガメにとって「食卓であり、
保育所でもある」存在になっていたのです。
吸汁する成虫の姿

成虫は鋭い口吻を葉に突き刺し、汁を吸っています。
枯れ始めたクレオメでも、内部にはまだ栄養が残っており、
虫たちはそれを察知して越冬前のエネルギー補給を行っています。
観察から見えてきたこと
肥料による植物の変化、秋の気候、
そして虫の越冬準備——それらが重なって起きた自然のタイミング。
クレオメに集まるヒメナガメたちは、
まるで季節の終わりを知らせる小さな生き証人のようでした。
🧪 ② クレオメは「アブラナ科に近い性質」を持つ
🌸 クレオメ(セイヨウフウチョウソウ)側の要因
分類上は フウチョウソウ科(Cleomaceae) ですが、
DNAや化学成分の面でアブラナ科に非常に近縁です。
🔹 両者に共通する特徴:
- イソチオシアネート系の香り成分(辛子臭)
- 花の構造(4枚の花弁・6本の雄しべ)
- 熟すと裂ける長いさや状の果実
➡️ この香り成分が、**ヒメナガメの嗅覚センサーを刺激して
「アブラナ科と誤認」**させる可能性があります。
つまり、嗅覚的な“勘違い”による誘引です。
まとめ
追肥のタイミングと季節の移ろいが重なり、
虫たちはクレオメを“最後のごちそう”に選びました。
枯れゆく花の上で繰り広げられる、
小さな命の営み。
その瞬間をカメラに収められたことは、
まるで自然からの贈り物のようでした。